1055．秋ハ原路上殺人事件 ～薄い本は殺意の積み重ねの上に～

道端で鈍器のようなもので殴られ殺害される事件が発生した。
人が少ない状況や逃走経路から、計画的な犯行と見られ警察は捜査を開始。

少ない目撃情報や不審な行動を取っていたとされる容疑者と思しき一人が浮上した。
しかし、その者の荷物からは鈍器と思われるようなものは発見されなかった。

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警察の者ですがちょっとバッグの中を見せてください。
いえね、殺人事件が実は発生してましてね。
目撃情報からあなたが浮上したんですよ。
大丈夫です、怪しいところが無ければすぐに開放いたします。



同人誌が三十冊程度。
（「男が二人絡んでいる表紙」が20数冊、作風はバラバラ
　「女の格好をした男、隣に普通の男の表紙」が10冊）


はい、ありがとうございます。

少々お尋ね致しますが、これはどこで購入したものですか？

なるほど。とらですか。何階で？はい、5Fですか。
レシートは？あ、はい、助手さん、確認を取ってきてください。


その時の袋は？とらでしたら必ず包むはずです。
しかし今はむき出しだ。バッグの中だからかろうじてバラけていませんが。
汚れたので捨てた？ほお、なるほど。

差し支えなければなぜ汚れたのか教えてもらってもよろしいですか？
はあ、差し支えありますか。分かりました。
いえね、あなたが橋から何かを捨てていた、という証言がありましてね。



いえ、まあ正直疑ってます。
本来なら個人が買ったものに対する追求は礼儀としてご法度なのですが
先ほど見せてもらった本、実はかなり気になってましてね。




ええ、そうです。正直この本のラインナップを見た時、すでに確信していました。
あなたはこれを"読む"ために買ったのではないのですよね。




通常、同人誌を買いに来た人間でしたら
まずあなたはありえない買い方をしているのですよ。

分かりませんか？では、このあなたの持ってたこの2冊。よく見比べてみてください。
表紙には「女の格好をした男、隣に普通の男」という構図ですね。
しかし、改めてよく見てください。




こちらは「女装」の本です。
しかし、こちらは「男の娘」本なんですよ。




分かりますか？
この二つを混同して買うことは通常ありえない。
何故なら「女装」は"男×男"　しかし「男の娘」は"男×女のような男"
性癖、ターゲットが全く違うのです。
前者は女性が買うもの、後者は男性が買うものなのです。



そう、だからあなたはこの本を読むために購入したのではない！
腐を装い！袋に詰めて殴り殺すための道具にするために買ったんだ！



おや、逃がしませんよ。
この地を何よりも知り尽くしている私ですから。



その後、川の下流から血まみれのビニール袋と紙袋が発見され、
それに付着していた髪の毛により犯人は逮捕された。


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こんな感じのダメな刑事物ってないですか。




あと、諸々の考察は放棄します。


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